石臼

 わが家にはかつて餅つき用の石臼があった。しばらく行方不明であったが、妹夫婦の家の庭にあるということが分かった。家を処分するというので早速もらいに行くことにした。重さは不明であるが、大人二人で持ち上げるのがやっとである。50~60kgはあると思われる。長年庭でハスを育てていたため、しっかりと汚れがついている。たわしやデッキブラシでこすってみたが一向に汚れが落ちない。洗剤やカビキラーを使っても全く効果がない。ここは洗浄のプロ的機器を使用することにした。「ケルヒャー」である。これは高圧の洗浄機で、コンクリートやブロックの汚れなどは一瞬にして落としてくれる。期待に胸を膨らませて洗浄開始である。が、しかし、全く効果がない。内面の一定の高さのところに線状に色がついているので、明らかに汚れと思われる。石であるから色が染み込むということは考えられない。にもかかわらず、いくら洗浄しても色が取れない。ここまでくると、これは汚れではなく模様であると解釈するしかない。

 そんな石臼を我が家のシンボル的な置物として飾ることにした。さて、どこが最もそれにふさわしいだろうか? いろいろと探し回ったが、玄関前の庭がいいだろうということに落ち着いた。台車に乗せて移動である。腰を痛めないように、しっかりと腰を落とし台車に乗せる。ところどころの段差は板を敷き、スロープを作り難なく乗り越えた。玄関先の庭にどっしりと構えたその姿は立派としか言いようがない。

 さて、これをどのように飾り付けていこうか? つくばいとしての利用が最もよさそうだが、いかんせん茶室がない。屋外であるから雨で水がたまる。それなら最初から水を入れておけばいい。水だけでは殺風景であるから石を入れてみた。色は白がいい。まだ殺風景なので黒い石を入れてみたが、あまりしっくりとこない。黒は炭にすることにした。2週間くらい放置すると、あきらめたのか沈みだした。これで白と黒がうまい具合に混ざりあった。つくばいなら柄杓と筧がワンポイントとなる。ここにもワンポイントが欲しい。フクロウの置物と流木をワンポイントとして添えることにした。

 貧弱であった玄関に重厚さが加わった。