5月のゴールデンウイーク頃、ホームセンターには大手種苗会社のトマトの苗が大量に並ぶ。量だけではなく種類も非常に多い。大玉、中玉、ミニ、マイクロトマトと大きさによっても種類が多い。それだけ各社が力を入れているのである。毎年6、7種類のミニトマトを植えていて、去年おいしかったものを今年も植えようと思うが、同じ品種の苗が手に入らない。それだけ毎年改良されているのである。病害虫に強く育てやすい、甘さが増している、実付きが多いというような内容である。
トマト栽培で大変なのは、ビニールで屋根を作って覆ってやらなければならないことである。簡易テントのようなものであるから、風の強い日や台風のときは大変である。ビニールははがれ、支柱が折れ曲がるからである。それの修復に半日かかってしまう。温室のようながっしりとした場所で栽培するのがベストである。では、なぜビニール屋根なのかというと、トマトは収穫時期に雨にあたると、多くの実が割れてしまうからである。雨は絶対に避けなければならないのである。割れた実は、半日もすると傷口はふさがって筋だけが残る。見た目は悪いが味に変わりはない。とはいうものの、夏の暑い時期だけに、その傷口に虫が止まって汁を吸っていることもある。虫の食べ残しを食べるようでなんとなく気分が悪い。
なぜトマトはひび割れるのか? その原因と対策を記した文章が多く出ているが、最大のものは雨である。いろいろと改良を加えられてきたトマトであるが、その原因はどうやら頑固な性格にあると思われる。原産地は南米の高地アンデスである。乾燥地帯で何代も育ってきたトマトは、水分に関して異常ともいえる貪欲さがある。アンデスの高地で生き抜くためには、最も必要な機能ではあるが、雨の多い日本ではそれが弊害となるのである。その機能は、遺伝子レベルで持っている乾燥に対する危機感とでもいえばいいだろうか。わずかな水分でも、今吸収しておかないと今度はいつ吸収できるかわからない、といった感じであろう。ひとたび雨が降ると、どんどん水分を吸収し、吸収した水分が実に集中する。そうするとどうなるか、水分を一気に送り込まれた実は破裂するしかなくなってしまう。トマトの品種は数えきれないくらい出ているが、この性格を完全に変えた種類は見たことがない。人間と同じく性格を変えるのは一筋縄ではいかないのかもしれない。