知恵比べ

 

 鳥の知能がどの程度のものなのか? それによってはこちらも対策のレベルを上げなくてはならないからである。テレビで繁華街のごみ袋を漁るカラスが映し出されているのを見たことがあるが、結構な知能があるように感じた。近所の人の話では、トマトやキュウリ、トウモロコシの収穫が近付き、そろそろ明日あたり収穫しようかと思っていると、きっちりなくなっているという。熟した状態がわかっているらしいという話を聞いたことがある。わが家庭菜園は、全体をネットで覆ってあるのでこの心配はなかった。数年前からネット外の棚にブドウの木を這わせた。上空からはブドウの葉だけしか見えない。横からはブドウの実にかぶせた袋が見えるだけである。それにもかかわらず半分近くのブドウが食べられた。なぜ、ここにブドウがあるのがわかったのか? 以前得た知識で、ブドウの葉の形状を覚えていて、ここにあるのがブドウであると認識でき、なおかつ、そろそろ食べごろの時期であるということを知っていた? それとも、いたずら気質が刺激され、袋がぶら下がっていると、つい引きちぎってみたくなったのか? それとも他に原因があるのだろうか? たとえば匂いとか? とにかく、原因がわからなければ対策が立てられない。いろいろと考えている時間がない。このままではあと1、2日ですべて食べられてしまう。3年かけてようやく30房程度の巨峰が、ゆさゆさとぶら下がるまでになっていたのである。棚の上部をネットで覆うのは困難を極めるので、周りをすべてネットで覆った。カラスが横からではなく、上部からやってきていたのであれば効果がないということになる。しかし、何もしないよりはいい。その後、しばらくは効果を発揮していた。ところが、1週間程度経ったころ、またしても襲撃された。残り少ないブドウの房をさらに減らされた。明らかに上部からの襲撃である。棚に止まった状態で食べられる部分だけが被害を受けている。ここで負けるわけにはいかない。困難を承知で、棚の上部にネットをかけることにした。これで完全に棚全体をネットで覆うことになる。なんともたいそうなことである。費用対効果を考えれば、全く無駄な作業である。しかし、家庭菜園をやっている以上、成果物を収穫した、という結果を出すことが重要である。ここは何としても、残りのブドウを死守しなければならない。ところが翌日、またしても襲撃を受けた。カラスの仕業だと思っていたが、どうやらそうではなく、ヒヨドリであると思われる。カラスのような大きな鳥が入る隙間がないにもかかわらず食べられたからである。作戦変更である。小さな隙間をすべてなくした。しかし、翌日またしてもやられた。4重にして被せた袋も破られた。これ以上隙間をなくすことは難しい。こうなれば、入ってきても食べられないようにするしかない。ブドウの房にナイロンのネットを被せた。さらに、ブドウ棚の下に案山子を2体設置した。もうこれが最後である。これ以上の対策は無理である。自然界には、これほどの甘味を有する果物はそう多くない。糖度が16度ある。一度この味を覚えると、簡単には諦められないのであろう。

 ようやく、被害を逃れたわずかなブドウを収穫することができた。もし、これらの対策でだめなら、次の一手は、ブドウ棚にハンモックを吊るし、そこで監視することになっていただろう。

 5月ごろ、ブドウの花が棚一面で咲き、今年はブドウが豊作になりそうだとワクワクしていた。食べきれないほどのブドウの有効利用として、ワインを密造しようとしていたのが見透かされたのかもしれない。今年はどうにか味わうことができる程度の量が収穫できただけである。ヒヨドリに感謝すべきかもしれない。しかし、来年こそ・・・。

 

      <防御ネット> 

       <食べ残し>

 

     <食べかす>