二変化

 わが家の猫の額ほどしかない庭が、狭いなりに大きく変化をする。秋に大賑わいとなるヒガンバナについては、以前このコラムで書いた。今回は春に大賑わいとなる話である。これもいつの頃からか定かではないのであるが、庭の片隅で黄色い小さな花が咲いているのに気が付いた。花びらに太陽が当たると、樹脂のような光沢を発する可憐な花である。「雑草にしてはきれいな花を咲かせるな」程度で眺めていた。それがいつの頃からか急激に増えだした。この庭は、全く肥料分はなく、ほとんど砂といった感じである。ヒガンバナも同様であるが、植物に肥料が本当に必要なのか? と、思わず疑ってしまいかねないほどやせた土地である。どちらの植物にもたくましさを感じる。これらに比べると、ハナミズキはまったく非力である。20年以上居座っているが、最初の頃に一度だけ花を咲かせているのを見ただけである。その後はまったく花を咲かせる気配がない。彼らに養分をすい取られているのかもしれない。いや、彼らがハナミズキに代わってこの庭を賑わせてくれているのである。

 これだけ広範囲に花が咲きだすと、せめて花の名前だけでも知っておく必要があるだろう。そうしないと、対等に接することができないのではないだろうかという気がしてきた。花と葉をつけた現物をアトリエへ持ち込み、パソコンとにらめっこである。「雑草」「花」「黄色」「3月」「・・・」と、いろいろ単語を並べて検索である。ようやく見つけたのが「猿喉草」という名前である。読み方は<エンコウソウ>である。そこには、『北方領土を含む北海道から山口県まで分布し、低地や湿地で生育。低毒ながら有毒成分を含む。猿猴というのは手長猿のことで、地面を這う茎をそれに見立てたらしい』と書かれていた。

 庭の他方の片隅には菜園から邪魔者扱いされていたミョウガが植えてある。なぜ邪魔者扱いされたかというと、あたりかまわず四方八方好き放題に地下茎を伸ばし、いたるところから芽を出すからである。庭の片隅であれば3方をブロックに囲まれ、広がる方向が限られるから管理がしやすくなる。このようにして移植したミョウガであるが、そのときにスイセンの球根が混ざっていたようである。その一角を占拠し、猿喉草と時期を同じくして咲き競っている。開花の時期が同じかと思っていると、他にも共通点があった。スイセンにも毒性がある。秋に咲くヒガンバナにも毒性がある。何やらわが家の庭は毒性植物の栽培庭と化しているようである。まさかこの程度のことでは、逮捕されるようなことはないと思うが、ここに「トリカブト」が自然発生的に繁殖しだした時は要注意であろう。それとも「大麻」か? 早速、「トリカブト」と「大麻」の特徴を検索しておこう。
 
<足の踏み場もないくらい・・・>
 
 

<どさくさに紛れて・・・>