たくあん(その2)
ダイコンをきれいに洗った後は4本ずつひもでくくって干す。たくあん作りで重要なのがこの「干し」である。「土地の耕作3年、育成10年、干し一生」、といわれるくらい難しいのである(どこかで聞いたようなセリフであるが・・・、決してよそでは言わないように。恥をかくこと間違いなしである)。ある程度の歯ごたえを得ようと思うと、しんなりとするくらいまで干さなければならない。しかし、干し過ぎるとゴムのように固くなってしまう。このあたりの見極めが経験を要する。ダイコンを輪にして、ぎりぎり輪になる程度がちょうどいい。こうなれば後は糠と塩、昆布、トウガラシを適量入れて漬け込めばいい。もちろん健康を気遣って減塩である。しっかりと重石を乗せて、水が上がってくるのを待つ。しかし、早く水を上げようと重石を重たくすると、これまたゴムのようなたくあんになってしまう。適度な重さということになる。1か月もすると水が上がり、順調に漬かっていることを知らせてくれる。水が上がれば食べられなくはないが、まだ、やや青臭さが残っている。もう少し期間を置き、発酵食品らしい味が入るのを待って食べることになる。
塩加減と重石等、条件を同じにして漬けた、「おいしいつけものたくあんダイコン」と「青首長ダイコン」の食べ比べの結果発表である。味に関する結論は、「引き分け」である。味の違いはまったくといっていいほどない。では、なぜ「おいしいつけものたくあんダイコン」なのだろうか? 色々と考えた結果、それはこの形状にある、と結論付けられる。「おいしいつけものたくあんダイコン」は細長いので、切断すると、一欠片に占める皮の面積が大きい。これが重要なのである。たくあんの美味しさは、皮の歯ごたえにあるといってもいいくらいである。したがって、この面積が大きいほどおいしいのである。純粋に味という面では引き分けであるが、歯ごたえという食感を含めた総合的な美味しさでは、細長い「おいしいつけものたくあんダイコン」が圧勝である。長さ方向、長さに垂直方向等、どのように切っても、その体積に占める皮の面積が大きいので歯ごたえがいい。
日が経つごとに味が変わり、美味しさを増してくる。春先になり、少し暖かくなってくると、たくあんが酸味を増してくる。このころが最高に美味しい。しかしこの期間は短く、すぐに酸っぱくなりすぎてしまう。最も美味い時期に、冷蔵庫に入るギリギリの大きな蓋付き容器に糠ごと入れて退避させる。こうすると、発酵が止まり最後まで美味しいたくあんを食べ続けることができる。鍋の締めがおじやであれば、毎日の食事の締めはお茶漬けである。この時においしいたくあんがあるのとないのでは大きな違いがある。今年は2樽漬けたので初夏ごろまで楽しめるだろう。また太る言い訳が一つ増えた。
<様子を見ながら数週間干す>
<しんなりとしたダイコン>
<ダイコンの葉を敷き重石を乗せる>