ブドウの育児放棄

 わが菜園内の収穫物で最も糖度の高いのはブドウである。鳥たちもそのことはよく知っている。菜園内で鳥の餌を栽培しているわけではないのでいろいろと防御をしている。しかし、この防御は最も難しい。ブドウの房に袋をかぶせたが、見事に破られ実を食べられた。それならばということで、袋の上から目の細かいネットをかぶせた。ネットの上から実をかみつぶされ、実がぐちゃぐちゃになってしまった。近づけないようにと棚の上部一面にネットを張ったが失敗。棚の下から侵入された。泣く泣く棚全体をネットで覆ったが、わずかな隙間から侵入された。最終手段として、キラキラと光るビール缶を多数ひもで連結し吊り下げた。これはどうやら効果があったようである。あまりにも単純で戦意を喪失したのか被害を受けなかった。

 このまま美味しいブドウを収穫できていれば万々歳であったが、肝心のブドウが美味しくないのである。糖度不足で酸っぱいのである。ひょっとすると、鳥もこのブドウを1個食べてみて、あまりの酸っぱさに食べるのをあきらめたのかもしれない。これを勘違いしてビール缶効果を喜んでもしょうがないのでは?

 毎年鳥に食べられ、それを防御しようとする菜園主の苦労を見てきたので、ブドウ自ら鳥も食べないようなものを生産するようになったのかもしれない。毎年春になると花が咲き小さな実の集まった房を作る。しかしこの実の多くがばらばらと落下し(「花振るい」というらしい)、ほとんど実が付かなかった。今年はもうダメかなとあきらめていると、夏ごろになって再度花が咲いた。この実は落下することなくすくすくと育っていった。とはいっても本来の大きさまでは育たず、かなり小ぶりのまま秋を迎えた。ちょっと時期はずれたがならないよりはいい。そして楽しみな収穫である。房にかぶせた袋を下から少し破り、実の様子をうかがう。黒っぽいものと青いものが入り混じっている。まだ完熟していない。ではもう少し熟すまで置いておこう。まだ・・・、まだ・・・、もう秋といえるような季節は終了している。葉はすっかり落ち、木にネットを被せられたブドウの房がぶら下がっている。なんとも寒々とした光景である。もうこれ以上おいても熟することはない。収穫して食べてみたが、想像通り完熟していない。糖度が足らず酸っぱいのである。これが原因で鳥が食べなかったのかもしれない。防鳥対策が功を奏したのではなく、ブドウがまずかったのかもしれない。

 菜園内で収穫したものは、すべてそれなりに処理をするのを基本としている。酸っぱいブドウもすべて美味しく(?)いただいた。菜園主の防鳥対策を毎年見ているブドウの木にとっては、わが子同然のブドウの実を菜園主に食べてもらおうとして育児放棄(完熟させなかった?)したのかもしれない。

<ちょっと恥ずかしい>

 

<オセロ?>

 

<硬くて酸っぱい>

 

<来年は?>