79.スポーツ観戦(その1)

 スポーツはするのも見るのも好きである。鍛え上げられた肉体と精神がぶつかり合う真剣勝負。一瞬の気のゆるみが勝敗を左右する。あるいは偶然の運が結果を左右する。どのようなことが起ころうとも、それは偉大なドラマであり、見ているものを感動させる。理由は選手が精いっぱいやっているからである。それが見ているものを引き込み、一体化するからである。しかし、どうもしっくりとこないスポーツがある。見ていて何か違和感があるのである。一生懸命さ、激しいぶつかり合い等、本来ならば引き込まれても何の不思議もないのであるが、そうはならないのである。これは困ったことである。そこで理由をじっくりと考えてみた。

 まず、第一に「箱根駅伝」がある。正月の名物スポーツである。関西ではあまり人気がないように思うが、関東では絶大な人気がある。2日間テレビにくぎ付けになる。炬燵でみかんを食べ、コーヒーを飲みただひたすらレースの展開を見るのである。日本人独特の性質を利用した「タスキの伝達」である。それだけに、結果を残せた人はいいが、チームの足を引っ張った人はかなり落ち込むことになる。個人プレーと違って、相当なプレッシャーがあるのだろう。どんどん順位を落とす、脱水症状でふらつく等、寝不足や体調不良で思い通りの走りができない選手がいる。中継地点でタスキを渡すと、その場に倒れこむ選手をよく見かける。決まって、成績の悪い選手である。区間賞をとるような選手は、タスキを渡しても颯爽と仲間のところへ行き抱き合っている。体調が悪いから遅れた。しかし、それでも持てる力をすべて出し切り精いっぱいやった。だからタスキを渡すと同時に力尽きて倒れてしまった、ということだろうと思う。今倒れているところはコース上である。そこに横たわることはレース妨害になる。後続のチームからすれば、迷惑この上ない。特に、シード権(上位10位以内)を争っているような場合は大問題である。この1秒のために、シード権を失い、予選会に出て上位成績(10位以内)を収めなければならなくなるからである。競馬の場合は、レース妨害があると降着という制度がある。妨害を受けた馬の順位の次の着順ということになる。たとえ1着でゴールしても、妨害された馬が10着になれば、妨害した馬はその馬の次の着順ということになる。レースはタスキを渡し、コース外へ出るまでとするべきである。脱水症状でふらついている選手に、監督が手を触れただけでそのチームは失格となる。しかし、タスキを渡した後、倒れている選手がいると、大会ボランティアが抱き起してコース外へと移動させている。今のルールでは走っているときは選手でタスキを渡した後は道路上の障害物(石やごみと同じ)扱いとなる。今まで学校の伝統や仲間との絆をつないで走っていた選手である。一生懸命走っている姿を見ているだけに、この障害物を移動させる映像は見たくない。自力でコース外へ出る(もちろん脱水症状等の例外はあるが・・・)ことで、選手は一人の人格を持った人間としての扱いになる。伝統のあるスポーツだけに、タスキ同様に勝敗以上の精神的なものにも感動したい。