38.カード

 デパート、スーパーマーケット、コンビニ、書店、電気店、洋服店、各種専門店等、多くの場でカードの所有を確認される。買い物をすると毎回聞かれる。そのたびに「持っていません」と言うと、店員が「失礼しました」と答える。そのうちにだんだんと持っていないことが、何か正常な日常生活に支障をきたしているのではないか、という気になってきた。こうなれば聞かれる店のすべてでカードを作ってやろう。そう思い決めて半年。あっという間に16枚になった。これ以外に大手喫茶店と私鉄のプリペイドカードが3枚。

 これだけカードがあると、出し間違いも結構ある。洋服の青木と青山は名前がよく似ているのでしょうがない。スターバックスとタリーズは名前がまったく似ていないにもかかわらず、雰囲気が似ているので間違いを起こした。店員からこのカードは使えませんと言われたときは、びっくりするよりも意味が分からなかった。よく見ると、これほどの嫌がらせはない。タリーズでスタバのカードを出しているのであるから、断られるのも当たり前である。同じような間違いを紀伊国屋でも起こした(この時はジュンク堂のカードを出した)。ポンタカードは複数の店で使えるので、使えない店でも出して断られることが多い。電機店のカードもよく間違える。小さな電気店が吸収・合併されているのだが親会社がどこか覚えていない。とりあえず出してみるが間違えることが多い。全く関係がないにも関わらず間違える場合としては、帰り道にデパートとスーパーマーケットで買い物をした時にあった。いつもと違う順序で買い物をした時に間違えて出してしまった。今日は絶対間違えない、と意気込んでカードを出そうとしたがカードが見つからない。結局「持っていません」ということもたまにある。しかし、店を出るとすぐにその店のカードが見つかるのである。出そうと思うと見つからない。出せば間違える。結局カードは持っていても持っていなくても煩わしいものである。いや、持っている方がよけいに煩わしいことがわかった。

 クレジットカードを使用していないので、常に現金での支払いである。冬の乾燥がひどいときなどは、手がカサカサで千円札を必要枚数取り出せない。まさか、店員が見ている前で指をぺろりと舐めるわけにはいかない。焦れば焦るほど手が滑って必要枚数が取り出せない。だからといって、店員に財布を渡して、必要枚数を取り出してくださいとも言えない。こんなことがあるたびに、レジのそばに水を含ませたスポンジ(郵便局の切手貼り用)を置いてほしいと切に願うのであるが・・・。相手に期待をしてもかなえられないので自己防衛するしかない。千円札10枚を2mmずつずらし、それらをマネークリップで挟み二つ折りにして持ち歩いている。これだと本をぱらぱらとめくる要領で必要枚数を簡単に取り出すことができる。これは非常に確実で便利なのであるが、いかにも現金を見せつけているようでちょっと気が引ける。しかし、指をぺろりと舐めるのに比べるとまだましか? 札は取り出しに苦労する。コインはどんどんポケットに溜まり、重たくてしょうがない。レジでの支払いはカード(クレジットカード)の方が便利かもしれない。

 どんどん便利になってくる世の中でこれほど厄介なものはない。早くすべての機能を1枚に集約したカードを作ってもらいたいものである。ここまでなら大歓迎であるが、手にマイクロチップを埋め込むのは御免である。