24.少子化
少子化といっても人間社会のことではない。人間社会のことを書くとややこしくなるので止めておく。スズメのことである。先日、武庫川のサイクリングロードで休憩をしていたときのことである。親スズメに比べると、やや色が薄く、鳴き声もちょっと甘えたような感じで鳴くスズメがいた。よく見ると、くちばしの両サイドはやや黄色味があり、明らかにまだ子供であることがわかるスズメが数匹いた。巣立って間がない子供である。飛び方もぎこちない。親鳥のようにすいすいとはいかない。ちょっと翼に力が入り過ぎ、ばたばたと飛んでいる。河原ではいい食べ物が手に入らないのか、それとも人間から物をもらう方が手っ取り早いと思ったのか、10羽程度が集まって来た。これほど期待をされれば、それに応えないわけにはいかない。エネルギー補給用に持っていたカステラを取り出した。これを適度な大きさにちぎり、スズメに向かって撒いた。一瞬にして大騒ぎである。なぜ静かに食べないのか? と思ってしまうくらい、チュン、チュン、チュンと騒がしい。嬉しいのか、それとも縄張りを主張しているのかはよくわからないが、とにかく静かに食べる気配はない。見ていて不思議なのは、スズメは歩けないということである。歩けないというと誤解を招きそうであるが、足を左右交互に出せないのである。両足をそろえて、ピョンピョンと飛ぶのである。わざと広範囲にカステラを撒き、ピョンピョン姿を見る。結構な速さで、かつかなりの距離を飛ぶ。子スズメが親に餌をねだっている。その姿が非常にかわいい。親鳥に近づき、両方の翼をだらりと下げ、激しく震わせながら大きな口を開けるのである。すると親鳥は「しょうがないな」、といった感じで先ほど食べたカステラを子スズメに与えている。親鳥はすべて同じ色をしているので、どれが夫婦かよくわからないが、子スズメの行動を見ていると、1羽と2羽の2グループであることがわかった。ある夫婦は1羽、もう一組の夫婦は2羽の子スズメを抱えているのである。かつての日本家屋では軒下部分の瓦に隙間が多く、そこに巣をつくっていたものである。今は瓦屋根に隙間がなく、電柱にある電線の支柱やカバー部分にもスズメが入れないように細工がしてある。民家の近くでの巣作りが難しくなっているのかもしれない。遠く離れたところで巣をつくり、食料を調達するために民家近くまで行くのだろう。近所の河原で餌を探しても、民家近くほど良質のエサが見つからないのだろう。そんなこんなでスズメの世界も少子化が進んでいるのかもしれない。
我が家では正月のしめ飾りに付いている米の穂がすべて食べられた。手抜き(種を蒔いた後土を被せなかった)をして蒔いたムギがすべて食べられた。昔からスズメは人間の近くに棲んでいる。それが少子化ということは、人間の側にも責任の一端があるのかもしれない。というわけで、早速わが家の小さな庭にスズメのエサ台を設置した。そして繁殖用の巣箱も設置した。毎日、十数羽のスズメがやってきて、例のごとく騒がしく餌を食べている。あまりにも騒がしいときは、宴会でも始まったのかと勘違いすることがある。素面ではつらいだろうから、そろそろ酒の提供を考えようかと思っている。ただ、昨今は未成年者の飲酒が問題となることが多いので迷っている。スズメは生後どの程度で成鳥となるのだろうか? 成鳥と未成鳥の区別がつかないので棚上げになっている。