129.トイレットペーパー考
かつてオイルショックなるものがあり、トイレットペーパーが極端に不足した時期があった。新聞紙や週刊誌でその代用をした時代の人は驚くほどのことでもなかったかもしれない。最近のトイレはほぼ水洗式である。人は良くてもトイレ自体がこれらを受け入れてくれない。水洗トイレというやつはそれだけではなく、水が絶対に必要なのである。地震や水害などで水道が止まると全く用をなさなくなってしまう。トイレに関してはいろいろと思いはあるのであるが、今回はトイレットペーパーについて考えてみたい。うすうす気が付いていたのであるが、最近ますます気になりだしたので書いてみる。
かつてと比べて、最近ではトイレットペーパーの役割が大きく変わったと思っている。日本においては、洗浄便器がほぼすべての公共施設や家庭に設置されている。したがって、トイレットペーパーが、便をふき取るものから水分を吸収させるものへと変化した。大昔、パリの下町であるオデオンの安ホテルのトイレで経験したトイレットペーパーについてである。それは週刊誌の表紙を2枚におろしたような厚みで、ツルツルパリパリとした紙であった。これを使用する苦痛は筆舌に尽くしがたかった。あまりの痛さに1日でパリを脱出した。その後しばらくはトイレが苦痛であったのを今も鮮明に覚えている。
現代のトイレットペーパーが備えるべき条件に付いて考えてみる。必要な条件としては吸水性である。そして不要な条件としては、におい、字や絵、ミシン目等、である。においや字、絵に関してはなぜ必要なのか考える気さえしない。ミシン目については使うたびに不快感を覚える。必要な長さは人まちまちである。それをミシン目によってここで切りなさいと指定されるのが気に入らない。ほとんどの場合希望する長さの数センチ手前で切れてしまう。ミシン目のせいである。トイレットペーパーホルダーには上部にカッター同様のカバーが付いている。ここできれいに切断することが可能である。これを使って切ろうとするとその手前にあるミシン目で切れることが多い。特に強いミシン目のある場合は確実に強制切断される。わが家にあった2種類のトイレットペーパーを調べてみた。ミシン目は11cmと22cmであった22cmはともかく11cmはあまりにも短い。これほど厳密に長さを決める必要があるのかどうか? また、シングルかダブルか、という問題もある。トイレットペーパーの使用方法としては数枚を重ねて使用するものである。シングルではダブルの2倍引き出すことになり効率が悪い。たしかに奇数枚重ねるのであればともかく、そこまでの繊細さは必要ない。したがって、ダブルでかつミシン目無し。
色や絵・文字、におい、ミシン目無し。これで生産性は大いに向上することと思われる。これらに費やす設備投資や労力を他に回せば、安価で高品質なものが生産できるのではないだろうか。非常に重要な役目をするものであるが、一瞬で役目を終え、水に流すのであるからこれでどうだろうか。
この考えが気に入らなければ、文句を言わずに水に流していただければ幸いである。