120.洗濯

 人生も後半になって、今まで「絶対に間違いがない」と思っていた常識が覆りつつある。それは洗濯に関する常識である。

 洗濯物がたまり、そろそろ洗濯をしようかなと思った時、天気予報を確認する。今日は朝から晴天、あるいは曇り時々晴れであっても、雨の心配がないことが条件になる。もしわずかでも雨の予報があると延期ということになる。どうしても着替えが必要な時は、部屋干しということになる。この部屋干し用に優れた洗剤がいろいろと開発されているが、極力やりたくない。部屋がジメジメするのが嫌なのである。それを避けるためには、エアコンを使用し除湿することとなる。これはこれで理にかなっているのであるが、なぜかすっきりとしない。やはり、下着は太陽の下でカラッカラに乾かしたい。気分的なことではあるが肌が喜ぶような気がして気持ちがいい。乾燥機での乾燥もいいには違いないが、あまりにもふわふわすぎるのがよくない。下着は少しごわっとするくらいがお気に入りである。

 とにかく、洗濯は晴れた日というのが、今まで全くゆらぐことがない常識であった。それが最近になって揺らぎ始めた。近所に住む人々の洗濯物を目の当たりにしたからである(もちろん内容物を確認したのではなく、漠然と干してあることを確認したのである)。朝からどんよりとし、今日は確実に雨が降ると天気予報が報じているにもかかわらず、洗濯物を外のベランダに干すのである(雨除けのひさしはない)。数時間後にしっかりと雨が降り出し、土砂降りになった。本人は会社へ出かけているので、洗濯物はベランダに干しっぱなしである。洗濯の時系列でいえば、脱水前の状態で吊るされている。

 夜帰宅し、再度洗濯のし直しかと思いきやそのまま干し続けてある。運よくその日は晴天で、びしょびしょになった洗濯物はカラッカラである。干しっぱなしとまではいかないまでも、雨が降りそうな気配であっても、洗濯物を干す家庭が目立つようになった気がする。

 雨が降る日、あるいはそれが予想される日は外干しをしない、というのが自分の中では常識であった。しかし、よく考えてみると、雨が極端に汚かったり臭かったりするものではないので、濡れたからといって再度洗濯をし直す必要はないのかもしれない。そう考えると、いったん洗って干せば、乾燥するまで干し続けるというのもアリかなと思うようになった。ただし、世間の常識はまだそこまでついていけていないと思うので、その点だけは意識しておかなければならない。