118.セミ

 6月も後半になるとかなり暑く感じるがまだセミは鳴かない。毎年7月の中旬を過ぎるころになるとセミが鳴きだす。最初はニイニイゼミが細々と鳴きだす。あたりに気を使いながら、「季節が到来したので、そろそろ鳴かせていただきます」といった感じで泣き出す。その鳴き声が聞こえたのかどうかはわからないが、しばらくするとクマゼミが一斉に鳴きだす。まさに一斉である。その鳴き声たるやもはや騒音である。シャン、シャン、シャン、・・・・シャン。もうこれ以外の鳴き声は聞こえない。これがほぼ午前中続く。さすがに鳴きつかれたのか午後は静かである。自分の鳴き声の大きさに辟易としないものか? と思うがそうはならないらしい。そういえば人間にも同じような現象があるのを思い出した。数人でにぎやかな居酒屋に入ると、自然と声が大きくなるのである。周りの声に自分の声がかき消されないように自然と音量が上がるのである。それを考えるとセミの大合唱も納得がいく。まさか、酒は飲んでいないと思うのだが・・・。

 クマゼミの大合唱でかき消されて聞こえなくなっているのがアブラゼミである。いつから鳴き始めたのかはわからないが、気が付けばしっかりと自己を主張している。ジィーーー、ジィーーー、と地味ではあるが鳴いている。集団で鳴いていないので、騒音といった感じは受けないが、何か息苦しさを感じる。蒸し暑さを加速させるような鳴き方である。時間を限定せず一日中鳴いている。これは数が少なくてもかなり滅入る。

 先行グループが鳴きつかれたころを見計らってツクツクボウシが鳴き始める。これが鳴き始めると秋の近づきを感じる。日が短くなってきたのを実感する。ここ数年のことではあるが、ミンミンゼミの鳴き声を聞くことが増えてきた。関西方面ではあまり聞かなかったセミである。それだけにあまり懐かしさのようなものはない。結構うるさいな! 程度の感想である。ミンミンゼミと同じように聞くようになったのがヒグラシである。こちらも新参者であるが、鳴き声に悲哀を感じる。カナカナカナ・・・。夕暮れ近くに山中で鳴かれるとなんともやるせない気持ちになってくる。

 セミの鳴き声はいろいろであるが、種類は違えどうるさいものが多い。それだけ繁殖に一生懸命になっているのだろう、と言ってしまえばそれまでなのだが、彼らに聞かせたいものがある。それは秋の虫たちである。どんな反応を示すだろうか。こういう表現の仕方もあったのか、と感心するだろうか。それとももっと景気よくガンガン行こうぜ! となるのだろうか。

 姿かたちの見えないネット社会、ますます新種のセミが増えているような気がする。