110.ゼッケン

 先日ノルディック世界選手権を見ていると、何やら聞きなれない言葉が頻繁に出てきた。どうやら選手が付けているゼッケンの番号を呼ぶときに使用しているようである。「ビブナンバー15番XXX選手」といった使い方をしている。いつからこのような言葉が使われるようになったのか? 

 子供のころの陸上大会では、すべて「ゼッケン15番XXX選手」という呼び方であった。それ以外の表現を聞いたことがなかった。それがいつのころからかはわからないが、マラソンなどで「ナンバーカード」という表現が使われだした。「ナンバーカード15番XXX選手」といった具合である。なぜゼッケンがナンバーカードに変わったのかは知らないが、その時は違和感を覚えた記憶がある。それもしばらくすると慣らされてしまい違和感は消えてしまった。普通にその言葉を受け入れて日常を過ごしていた。ところが最近になってまたもゼッケンに関する違和感が発生した。それがこの「ビブナンバー」である。ノルディック世界大会を見ていると、アナウンサーがしきりにこれを使う。しきりというよりは、「ビブナンバー15番XXX選手」と紹介するので使わざるを得ない。これはすぐにゼッケンのことだろうということは理解できたが納得はできない。ナンバーカードと同様に何やら理解しがたい違和感が残る。

 そもそも多くの選手が出てくると、どれがだれで、だれがどこにいるのかわからなくなる。名前では数十人も覚えられない。ましてや聞きなれない外国人名では覚える前に試合が終わってしまう。それをわかりやすくするために、番号を付けようとしたのが始まりだろうと思う。見る側もその方が理解しやすい。そのために布切れに番号を書いて胸と背中に張り付けたのがゼッケンであると思う。したがって選手を識別するためには「番号」があればいいのである。ゼッケンにはいろいろな説があり、ドイツ語やイタリア語、ノルウェー語まで出てくるがはっきりとは書かれていない。ナンバーカードにいたっては和製英語で海外では通じないらしい。これを見るとなんとも意味不明な言葉を使用し続けていたのだなーと思わざるを得ない。では、最近耳にするようになったビブナンバーはどうか? 2020年に競技規則の修正が行われ、「ナンバーカード」が「アスリートビブス(ビブス)」になった、とあった。どうやらこれが世界標準であるようだ。

 今となっては懐かしい「ゼッケン」という表現が使われているのは競馬くらいか? 競走馬が付けていたゼッケンを抽選でプレゼントしているのを見かけたことがある。

 ゼッケンが国際化したところで、競技実況も国際化したらどうだろうか。トラックの長距離レースやマラソンでの「日本人トップ」という表現はいかがなものかと思う。世界標準に「日本人トップ」という表現はない。ましてや日本人トップという表彰もない。