スズメ(その3)

 異変が起こった。1週間以上スズメの姿が見えない。2年以上毎日エサを食べに来ていたスズメがぱったりと姿を現さなくなった。近所の屋根を見上げても姿はない。スズメは渡り鳥ではないので、季節によって移動することはない。ひょっとして焼き鳥用に一網打尽にされたのだろうか? 

 ある日の夕方、散歩でふらりと近所を歩いていると、聞きなれた鳴き声が聞こえてきた。そう、あの餌を食べるときの騒がしい鳴き声である。チュンチュン、チュンチュンと大騒ぎである。石垣の上に立つ家の庭から聞こえてくる。見ると、大量のスズメが餌箱に群がっている。どうやら、こちらに鞍替えをしたようである。2年以上お世話になっているにもかかわらず現金なものである。恩も義理も感じないようである。わが家では、寝る前に空腹では寝付けないだろうと思い、夕方に数分で食べ切れる量の餌を提供していた。そのエサはホームセンターで購入したもので、あまり品質のいいものではない。高品質なものは、ヒエやアワの粒の大きさが違う。わが家で購入しているものは、粒が小さいものが多く混ざっている。粒が小さいということは実が未熟なものということになる。野菜や果物でもそうであるが、完熟していながら小さいものというのはうま味に欠けるのである。スズメでも味の区別はつくらしく、わが家へ食べに来ているときも、よほど腹が減っているとき以外は小さなものを残していた。新規開拓したところでは高品質なエサが食べられるのであろう。しかも、量の確保も十分に違いない。

 最近になってたまにではあるが、餌を食べに来ることがある。上品質のえさの供給が途切れたのであろう。背に腹は代えられぬ、ということであろうか? 腹が減れば何でもいい、ということで食べに来たのであろう。ほんのわずかな量の餌ではあるが、常に準備をしておいてやろう。寝る前にはお腹に一定のものが入っていないと熟睡できないであろう。野生の生物を餌付けするのはよくないが、ひもじい思いをしない程度の餌の提供は許されるだろう。またホームセンターで追加購入しておこう。

 そろそろ来年度の予算を組まなければならないが、これは援助交際費として計上しておくことにしよう。そして、しっかりと領収書をもらい、確定申告時には所得控除に加えよう。さてその控除費目は何にしようか? 扶養控除? 雑損控除? 寄付金控除? まさか援助交際費控除では認められないだろう。